レーザー概説
LASERの語源
レーザーは、レーザー光が発生する原理を表現した英語
Light
Amplification by Stimulated
Emission of Radiation
の各単語の頭文字 LASER
をとったものです。(誘導放射による光の増幅という意味です。)
LASERの原理
誘導放射による光の増幅の原理を簡単に説明いたしましょう。
原子は左図のように,原子核の周りを電子が円運動しています。電子は決まった軌道をまわるため、電子の持つエネルギー(位置エネルギーと運動エネルギーの総和)は、連続的な値をとらず、段階的な値をとります。
このように段階的な軌道上に電子がある状態を定常状態といいます。
原子が外部から電磁波などのエネルギーを吸収すると、電子は、低いエネルギー準位(定常状態)から高いエネルギー準位に移ります。この状態を励起された状態といいます。この状態は不安定な状態であり、すぐに低いエネルギー準位に戻ろうとします。これを還移といい、このとき固有のエネルギー差に相当する光を放出します。
ここで、エネルギー準位の高い方のエネルギーをE2、低い方のエネルギーをE1とすると、放射される光の振動数νは、
E2−E1=hν h:(プランク定数 h=6.62×10-34J・sec)
と示されます。これをボーアの振動条件といいます。還移するときに、そのときの状態に固有の振動数(波長)の光を放出します。この現象を自然放射といいます。放射された光は、同じように励起されている他の原子を刺激して同様の還移を誘発します。これらの放射された光と、誘導されて放射される光は、振動数、位相、進行方向、偏向状態がおなじです。以上の現象が、光の誘導放射と呼ばれる原理です。
自然界では、自然放射と吸収の平衡がとれています。よって,レーザー発振(レーザー光線)を得るためには、自然放射が吸収を超える頻度の誘導放射が起こる環境を作らなければなりません。低いエネルギー準位に電子がある原子の数より、高いエネルギー準位に電子がある原子の数が多い状態を反転分布といいます。この反転分布の状態を作ることにより、レーザー発振(レーザー光線)が得られます。
レーザー発振器の構造
レーザー発振を得る素子や機器には多くの種類がありますが、ここでは、レーザーディスプレイに通常使用されるガスレーザー発振器について述べます。
ガスレーザー発振器の構造は基本的に、ガスを封入し、反転分布を起こすために必要な放電を起こす電極を備えたレーザー管と、レーザー管の両側に光共振器が配置されています。
レーザー管に定格の電流を流し放電させると、レーザー管内部には強いプラズマが生じます。このプラズマの中の自由電子が原子と衝突して励起状態が得られます。レーザーの波長に対して極めて高い反射率をもつ1対の反射鏡から構成される光共振器の間で、光が往復しているうちに、光の増幅が行われます。反射鏡の一方を反射率約99%の反射鏡にすることで、レーザー光として、取り出すことができます。
レーザー光の性質および特徴
光の性質は波と考える事ができます。波長は色、振幅は明るさ、そして位相で
す。レーザー光線は単波長、同位相の光です。そのため、他の光と比べて
可干渉性、単色性
、強指向性の性質を持っています。この性質は、ほかの照明器具では得る事ができません。
[干渉性]
レーザー光は,誘導放出の増幅によって生ずる光のため、その原理上位相が整然とそろった規則正しい電磁波です。したがって、この波を合成することにより、振幅の大きい(出力の大きい)波を得ることができます。この性質を可干渉性といいます。
[単色性]
レーザーの発振は原子の持つ段階的なエネルギー準位の還移により起こりますので、発振条件を満たす、その原子固有のエネルギー順移管でのみ発振可能となります。よって生じるレーザーの波長はレーザーの種類(レーザー発振に使用する原子)によって固定されています。自然光をフィルターなどで分解した光と比べれば、レーザー光の波長の幅は非常に狭く、波長あたりのエネルギーは巨大です。この性質を単色性に優れているといいます。
[強指向性]
レーザー光は位相のそろった非常に乱れの少ない波であるため、遠距離に飛ばした場合、きわめて広がりの少ない(強指向性の)ビームとなります。
レーザーディスプレイが効果を発揮する最大の理由が、レーザーの指向性が優れている点です。長距離飛ばしても細い光束が維持され、光量の損失は、空気中のほこりや水蒸気などの微粒子による散乱のみです。