クラカン劇場


朝のあいさつ

職場の同期会なるものがあって北海道へ行くこととなった。
出発の前日の朝、職場には久しぶりにお向かいのKさんが出勤していた。Kさんは家族が次々に病気で倒れたため、看病のためしばらく職場を休んでいたのである。


「大変でしたね。」「まだ完全に治らなくてね・・」
看病疲れのせいか幾分元気のなさそうな顔で、Kさんは状況を話し始めた。
私は気の毒に思いつつ、話に耳をかたむけながらパソコンを立ち上げメールのチェックをはじめた。
見ると、めずらしく団長からメールが届いている。
北海道旅行のため、次の練習を休むメールを前の日に団長に送っていたので、その返信が来ていたのである。
大会近いのに練習休んじゃって迷惑だよな、でも何だろう・・

 「北海道は、でっかいどう。」

いつも練習で何か言わなくては気が済まないらしい団長のしょーもないダジャレに冷ややかな一瞥を投げている私であるが、朝のメールに不意のカウンターをくらってしまい、不覚にもツボにはまってしまった。

しまった、肩の震えが止まらない。
Kさんの苦労話はまだ続いている。

違う、違うんだKさん!決してKさんの話を聞いて笑ってるんじゃないんだ!
だめだ、どーしよう、口元のゆるみが・・。


いたたまれなくなって、私は席を立った。まだ話も終わってないのに席を立ったら更に印象を悪くしてしまうのではという不安が頭をよぎりつつ、しまりのないニヤケ顔で私は廊下を歩いていた。
トイレに入り声を殺して笑いまくりながら、「油断大敵」「下手な鉄砲も数うち当たる」「備えあれば憂いなし」などといった格言が脈絡もなく頭の中に浮かんでは消えていった。



  


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