ライン(横)
  ホーム       目次        次ページ

セミナー題名2


頭痛を経験したことのない人はほとんどいないでしょう。頭痛はごくありふれた症状のひとつで、二日酔いや風邪の時にも出現します。その他にも、いろいろな原因で頭痛は出現してきますし、慢性的な頭痛に悩まされている人も大勢います。どのような頭痛の場合に医療機関を受診すべきか? 一般的な症状だけに、判断もつけ難いものです。

 01  頭痛とは?
 02  頭蓋の構造
 03  頭蓋内に原因のある頭痛
 04   頭蓋内に原因のないもの
 05  頭痛の治療
 06  MRIの役割


 区切り線
  ホーム    目次   トップへ   前ページ   次ページ

 01  頭痛とは?
頭痛とは、ある一定時間続く頭部領域の痛み、あるいは数秒間の痛みが短時間内に反復することをさします。
様々な原因により頭痛は生じますが、大きく分けて、頭蓋内(頭の骨の中)に原因がある場合と、それ以外に原因がある場合に分かれます。
 解説ボタン 解説
痛みは知覚神経が刺激され、この興奮が脳に伝わることで痛みとして認知されます。

頭部領域では、皮膚や筋肉内では多くの知覚神経が存在します。しかし頭蓋内は、脳をつつむ硬膜や太い血管周囲には知覚神経が多く存在しますが、脳内にはほとんど存在しません。
意外に思われるかもしれませんが、脳そのものは痛み刺激に対して鈍感なのです。
また、頭蓋内には、その内部の圧を一定に保とうとするシステムが存在します。ゆっくりと大きくなる良性の脳腫瘍の場合では、このシステムが充分に機能する時間的余裕があり、腫瘍が驚くほどの大きさになるまで頭痛が生じないこともしばしばあります。
一方、脳内出血やクモ膜下出血の場合では、このシステムが働く時間的余裕がなく頭蓋内圧は急激に上昇し、激しい頭痛が生じます。頭蓋内圧が上昇することで、硬膜や血管周囲の知覚神経が刺激されるためです。

また、頭部前方部の痛みや頭蓋内の痛み刺激の多くが、三叉神経を通して脳内に伝わりますが、この神経は顔面にも広く分布しています。
このため顔面領域の痛みが頭痛として知覚されることもあります(アイスクリーム頭痛や副鼻腔炎など)。


 区切り線
  ホーム    目次   トップへ   前ページ   次ページ

 02  頭蓋の構造
脳
解説ボタン 解説
 1) クモ膜下出血
クモ膜下腔に出血した状態。外傷以外では、脳動脈瘤破裂による出血がほとんどです。突然激しい頭痛が生じ、『突然ハンマーで殴られたような痛み』と表現されたりします。脳動脈瘤破裂は死亡率も高く、救急車搬送の対象です。
 2) 高血圧性脳出血
高血圧のため、脳深部にある細い動脈が破れ出血します。出血の大きさにもよりますが、通常は急激に頭蓋内圧が上昇するため頭痛が生じます。片側の手足の動きが悪くなる片麻痺を伴っていることが多く、早急な治療を要します。救急車搬送の対象者です。
 3) 脳梗塞
通常の脳梗塞では頭痛は生じません。広い範囲で脳梗塞が起きると、脳浮腫が生じて頭蓋内圧が高くなり、頭痛の原因となることはありますが、この場合一般的には意識障害を伴っており、尋常な状態ではないことは一目で分かります。勿論、緊急事態です。
 4) 脳腫瘍
良性・悪性を問わず、腫瘍のできる場所によっては、比較的小さい段階から頭痛を生じることがありますが、この場合、多くは水頭症(脳内の脳室というところに脳脊髄液が過剰に貯留した状態)を伴っています。頭痛は激しく、嘔気・嘔吐を伴うことも多いものです。
一般的には、悪性脳腫瘍では周囲の脳に浮腫が生じて頭蓋内圧が高くなり、頭痛を伴うことが多く、良性の場合は何らかの他症状(片麻痺や言語障害など)が出現しても頭痛のないことがあります。いずれにしても、軽度から中等度の頭痛であることが多いので、気になる症状を伴っているようであれば、早めに専門医を受診した方が賢明です。 
 5) 慢性硬膜下血腫
硬膜とクモ膜の間のスペースに血腫(血液の塊)が形成された状態です。通常、硬膜とクモ膜の間にはあまりスペースがありませんが、高齢者になると脳は萎縮しこのスペースが広がることがあります。この広くなったスペースに、軽微な外傷(壁に頭をぶつけたなど)が原因で小さな出血が生じ、これが時間をかけて(通常1〜2ヶ月)徐々に大きな血腫となり、脳を圧迫するようになります。症状は、痴呆様の症状が主ですが、軽度の頭痛を訴えることも多々あります。早目に脳神経外科を受診し、治療を受けるべきです(比較的簡単な手術でほとんどの方が元の状態に戻ります)。
 6) 感染
頭蓋内に細菌やウィルスが侵入し、感染を生じると脳炎や髄膜炎になります。脳炎では、発熱とともに激しい頭痛が生じ、やがて意識障害が出現してきます。早急に治療を開始しなければいけない状態です。髄膜炎では軽症から重症のものまでありますが、激しい頭痛と発熱が生じます。解熱剤を使用して解熱しても頭痛が続くようであれば、髄膜炎の可能性があります。


 区切り線
  ホーム   目次    トップへ    前ページ    次ページ

 03  頭蓋内に原因のある頭痛
 1)  クモ膜下出血
 2)  高血圧性脳出血
 3)  脳梗塞
 4)  脳腫瘍
 5)  慢性硬膜下血腫
 6)  感染
 解説ボタン 解説
ラクナ梗塞は、脳の深いところにできる小さな梗塞で、大きさは1センチ以下のことがほとんどです。
梗塞ができる部位にもよりますが、多くは症状のない無症候性脳梗塞です。脳内の太い血管から脳を貫く細い動脈(通常1ミリ以下)が、動脈硬化が原因で閉塞して生じるものです。
このタイプの動脈硬化に最も悪影響を与えるのは、年齢・高血圧・糖尿病・喫煙・高コレステロール血症で、動脈硬化に与える影響の強さもこの順になっています。
したがって、年齢とともにラクナ梗塞の頻度は高くなり、80歳代ではほぼ100%、70歳代で50%、60歳代で20〜30%に認められるようになります。


 区切り線
  ホーム    目次   トップへ    前ページ   次ページ

 04  頭蓋内に原因のないもの
 1)  偏頭痛(血管性頭痛)
 2)  筋収縮性頭痛(緊張性頭痛)
 3)  群発性頭痛
 4)  緊張性-血管性頭痛
 5)  後頭部神経痛
 6)  三叉神経痛
 7) その他 (発熱・高血圧・副鼻腔炎)
 解説ボタン 解説
 1)  片頭痛(血管性頭痛)
頭皮にある動脈に強い血管拡張が生じ、血管拍動に一致した『ズキンズキン』とした頭痛が生じます。痛みは、側頭部ついで後頭部に多く、通常一側性で持続時間は4〜24時間。家族歴も濃厚です。頭痛に伴って光視症(フラッシュライトのような光が視野の一部に出現する状態)が出現することが多く見られます。
 2)  筋収縮性頭痛(緊張性頭痛)
ほとんどが両側性で、主に後頭部に圧迫されるような張ったような鈍痛が持続します。女性に多く、精神的ストレスとの関連もみられます。後頚筋群(首から後頭部にかけての筋肉)の持続的収縮が主因です。慢性頭痛の多くはこのタイプで、アルコール飲用で頭痛は改善します(血管性頭痛では悪化)。
 3)  群発性頭痛
主として男性にみられ、一側の眼の奥および眼の周りに激しい持続性の痛みが2時間程続き、『燃えるような』あるいは『刺すような』痛みと表現されます。年に1〜2回程度の発作頻度であることが多く、頭痛と同時に頭痛側の眼の充血・流涙・一側のまたは両側の鼻閉や鼻汁などが出現します。
 4)  緊張性一血管性頭痛
上記の1)と2)が混在するタイプの頭痛。緊張性頭痛の1/4は片頭痛の症状も有し、両者の性格をもつ混合型と考えられています。
 5)  後頭神経痛
後頭部皮膚に分布する神経の神経痛で、後頭部領域の『ピリッ』とした痛みが数秒間続きます。多くは原因不明ですが、頚部脊椎病変や痛風などが原因となる場合もあります。
 6)  三叉神経痛
顔面の知覚を脳に伝える神経が、三叉神経です。この神経が過敏状態になるのが三叉神経痛です。三叉神経はその名の通り三つの神経からなり、第T枝は眼周囲および額、第U枝は上顎、第V枝は下顎、の知覚を脳に伝えています。この内、第T枝領域の痛みは、頭痛として自覚されることも多いのです。
 7)  その他(発熱・高血圧・副鼻腔炎・緑内障など)
発熱では頭皮の血管が拡張し、拍動性の頭痛を生じることがあります。
また、高血圧でも後頭部や側頭部領域の鈍痛が起きることがあります。
さらに、副鼻腔炎では前頭部から眼周囲の頭痛を生じることがあります。
緑内障でも、眼圧の上昇に伴い前頭部を中心とした激しい頭痛を生じることがあります(多くは眼痛を伴いますが自覚されないこともあります)。通常、何らかの視力・視野異常を伴います。


 区切り線
  ホーム   目次    トップへ   前ページ   次ページ

 05  頭痛の治療
 1)  頭蓋内に原因のある頭痛
    原因疾患の治療
 2)  片頭痛・偶発性頭痛
    種々の鎮痛剤、血管作動性薬剤の投与
 3)  筋収縮性頭痛
    種々の鎮痛剤・筋弛緩剤の投与
物理療法による頭頚部筋群の緊張状態改善
 4)  その他
    原因疾患の治療、あるいは鎮痛剤投与
 解説ボタン 解説
 1)  頭蓋内に原因のある頭痛
     原因疾患治療の治療を行うことで、多くの頭痛が改善します。ただ、複数の疾患がある場合は一方が治癒しても頭痛が続くことがあります。
 2)  片頭痛・偶発性頭痛
     いずれもいわば体質的なものであるため、根本的な治療法はない。痛い時には、鎮痛剤あるいはトリプタン製剤(血管拡張を防ぐ薬)内服で、多くの場合頭痛は消失します。
頭痛を繰り返す場合は、予防薬の連日内服で頭痛発作の頻度が抑えられる場合もあります。
日常生活上では、皮膚の血管に影響を与えるような食物や嗜好品(アルコール・コーヒー・煙草など)を避ける。
温度差の激しい環境(夏場のクーラー・サウナなど)を避けることで頭痛発作の頻度を低下させることも可能です。
 3)  筋収縮性頭痛
     後頚部筋群の過緊張状態が原因ですので、これをやわらげることが頭痛軽減に役立ちます。睡眠時に筋肉は休息するので、不眠が続くと頭痛の原因になります。
また、高枕をすると後頚部の緊張がなかなか取れず、頭痛が長引く原因になります。
さらに、筋肉は冷やすと硬くなります。クーラーが直接首のあたりにあたると後頚部筋群の緊張が増大します。筋肉を和らげるためには、温めてマッサージすることが最も効果的です。
普段の日常生活では上記のことに注意し、それでも痛みが続くようであれば筋肉を和らげるお薬(筋弛緩剤や安定剤)や睡眠薬の内服で頭痛がおさまることもあります。それでも痛みが続くようであれば、鎮痛剤の内服を行います。
やっかいなのは、混合型頭痛で、片頭痛がよくなっても筋収縮性頭痛が残ったり、逆の場合もあります。自分自身である程度頭痛の性状を見極め、適切な対応をできるようにすることが理想的です。
 4)  その他
     副鼻腔炎や緑内障では、現疾患の状態の改善とともに頭痛も消失します。
緑内障は、失明の原因になりますので早急な眼科的治療が必要です。


 区切り線
  ホーム    目次    トップへ   前ページ    

 06  MRIの役割
 1)  頭蓋内疾患の有無の検索
     頭痛の多くは、頭蓋内に原因のないものである。
一方、頭蓋内疾患の症状で一番多いのも頭痛である。
 2)  治療法の選択
     頚椎病変を含めた検索で、確実な治療法を選択する。
 解説ボタン 解説
 1)  頭蓋内疾患の有無の検索
     頭痛を訴える方の多くは、先述したとおり頭蓋内に原因のない方が大多数です。しかし、頭蓋内疾患の症状で一番多いものも頭痛です。慢性頭痛の方でも、今までと性状の違う頭痛がしたら、あるいは麻痺やめまいなどの他の症状を伴っていたら、早急に脳神経外科専門医の診察を受け、MRI検査を受けた方が賢明です。
 2)  治療法の選択
     頚椎病変が原因で筋緊張性頭痛が起きることがあります。MRI検査は頚椎 病変の診断にも最も役立つものです。


 区切り線
  ホーム    目次   トップへ   前ページ    
ライン(横)
アンダーバー