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映画雑文
アイズ・ワイド・シャット
制作・監督・脚本■スタンリー・キューブリック
脚本■フレデリック・ラファエル
出演■トム・クルーズ/ニコール・キッドマン/シドニー・ポラック/マリー・リチャードソン
1999、アメリカ



 キューブリックの作品であることと、“あの”予告編を見てからというもの前売り券を早々と手に入れ、公開をずっと心待ちにしていました。

 テーマが「嫉妬と性的オブセッション(虜)、罪悪感」と知ってまっ先に頭に浮かんだのが、ロマン・ポランスキー監督の「赤い航路」(1992、仏=英)です。

 かなりエロティックな映画で性描写がふんだんにあるのですが、それよりも、主人公の女の子の心的葛藤にとても共感したのを憶えています。「女は怖いのよ」的よくありがちな「愛憎劇」にならないところがとても印象的で、彼女の心理描写につまされるというか……。

 「アイズ・ワイド・シャット」もこういう路線かと勝手に想像していたのですが、キューブリック監督はもっと普遍的で、特異な性的オブセッションではなく、誰でも心の中に抱えている「無意識の自分」を描き出そうとしたのではないでしょうか。

 目に見えるもの、自覚・意識しているものだけが真実ではない、夢の中に浮かび上がるものも自分のものとして受けとめよ。だから、eyes wide shut ……。




私はこの映画で、幸福な結婚生活に存在するセックスについての矛盾した精神状態を探り、

性的な妄想や実現しなかった夢を、現実と同じくらい重要なものとして扱おうと試みた。

―スタンリー・キューブリック―




 意味は異なりますがR18は正解、10代の少年・少女では到底理解できないテーマだと思いました。“難解”というより、“夫婦”が対象なのでやっぱり大人の映画だなと…。

 また、“夫(男)”と“妻(女)”の立場でも見方・印象が違うかもしれません。

 故に、賛否両論分かれるわけですね。

 トムはさておき、ニコール・キッドマンにはやられた!という気がしました。

 あまり好きな女優ではなかったのですが、もしかして彼女スゴイかも…。自分のイメージを巧みに利用していますね、彼女。

 それを気付かせてくれたのはキューブリック。もっと観たかったな彼の作品…。

 予告編でもそう思ったのですが、オープニングでは「誘う女」(1995、アメリカ)のヒロインが生き返ったのかと思いきや、彼女演じる妻の心理描写は切ないほど伝わってきました。

 このダンスシーンでよろめかないキッドマンが凄いし、そういう妻を演出したキューブリックはやっぱりスゴイ!

 ハリウッドの「女性」の描き方にフラストレーションがたまっていましたが、この映画で解消、解消。よかった〜。

 自ら「最高傑作」と評したのは、とかく哲学的だとか人間の隠れた内面性を捉えた監督と言われることに対して、内的世界はおのずと“性”に帰着するということのキューブリック的表現だと思います。

 この作品は、映像的にはぜーんぜんキワドクもエグくもないと思いましたが、ただ、雰囲気はりっぱ大人の映画。

 こういう、こってりテーマにまったりの画像って好きです。


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