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映画雑文
ネットワーク
NETWORK

1976 アメリカ 121分
監督:シドニー・ルメット  製作:ハワード・ゴットフリード/ダニエル・メルニック  脚本:パディ・チャイエフスキー
撮影:オーウェン・ロイズマン  音楽:エリオット・ローレンス
出演:ピーター・フィンチ/フェイ・ダナウェイ/ウィリアム・ホールデン


最後の最後に流れるナレーションにドキッ!

そうです、ラストにすべてのメッセージが凝縮されています。

TVの視聴率競争の浅ましさは今も昔も変わっていません。
現実は小説よりも奇なり、などとよく言えたもので、“やらせ”の応酬は後を絶たず…。
芸を持たない芸能人が素人を罵倒し吊し上げて笑いものにする。
タレントのプロモーションまがいのテレビドラマはもう飽きたしね。

わが家では、ほとんど地上波の番組は見ていません。
TVの話題がないとコミュニケーションのとれないつき合いはしていないし、情報を集めようと思えばその手段はいくらでもある。

今や多チャンネル時代。
テーマはより広範囲に細分化し、内容はより詳細に専門的に…。
垂れ流しの放送に埋もれるのではなく、自分にとって必要な情報を自らの意志で取捨選択できることの方がより健全だと思います。

あぁ、とにかくこのラストのメッセージが衝撃的です。

(本当はTVだけに限らないんだけど)、TV関係者は自戒の念を込めて特別鑑賞会でも開いてはどうでしょうか。

きれい事で言っているのではあーりません。
誰だって他人に自分の感情(喜怒哀楽)を支配されたくないでしょう?


というのが、この作品に対する一般的な解釈といえるでしょうが、私にとっては別の意味で大変興味深い作品になりました。

それは、「夫婦」についてです。

本来のテーマから逸れてしまいますが、今まで見えそうで見えない、分かりそうで分からない、そういうモヤモヤしたものが立ち所に晴れる気がしたのです。

ウィリアム・ホールデンは若くて野心家のフェイ・ダナウェイと不倫関係になり、妻へその告白をするやり取りの中で、妻がこう言います。

「彼女のような若さはないけど、せめて私を尊重してよ!」と。

この台詞を聞いた瞬間、「そう!それだよ、それ!」と思いました。

目から鱗が落ちるとはまさにこのこと。こんなに明確な言葉が見つかるなんて…。

映画の題材としてよく取り上げられ、巷のよもやま話でも大いに語られている「夫婦」。

夫婦とは? その絆とは? 夫婦って何? 夫婦であることの意味は???

それは

「信頼」と「尊重」なのだ!「愛とは信じること」…なーんて、旧い映画の台詞にありましたね。

配偶者同士、ともに相手を尊敬できるからこそ夫婦なのだ、と…。

何てことはない当たり前のことですが、あの妻の台詞でハッキリそれだと確信できました。


小さい頃に観ていた「大草原の小さな家」というアメリカのTVシリーズがあります。

そのシリーズの後半で、メアリーとローラの姉妹がそれぞれ結婚を決意する時、姉は妹に、妹は姉に同じことを問いかけます。

「彼は尊敬できる人?」

大好きなシリーズだったこともあり、その中にとても印象的な台詞が幾つかありますが、これもその一つです。

それから、私も思っていました。

いつか結婚する相手は、「彼は尊敬できる人です。」と言える男性でありたいと…。

さて、密かな私のその思いは見事叶えられることになるのですが、TV業界の内幕を描いた「ネットワーク」を観ていて、テーマとは別の、そんな思いに耽るニャンコなのでした…。

大人の映画だなぁ、というのが感想です。

アカデミー賞の主演男優賞(ピーター・フィンチ)、主演女優賞(フェイ・ダナウェイ)、そして脚本賞を受賞。




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