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映画雑文
レザレクション
RESURRECTION
1999 アメリカ 監督■ラッセル・マルケイ
製作■ハワード・ボールドウィン/ニール・ナイアミ/パトリック・コイ/クリストファー・ランバート
原案■クリストファー・ランバート/ブラッド・マーマン
脚本■ブラッド・マーマン
出演■クリストファー・ランバート/リーランド・オーサー/ロバート・ジョイ/デヴィッド・クローネンバーグ/ロバート・ジョイ


http://www.gaga.co.jp/movie/resurrection/index.html


“「羊たちの沈黙」「セブン」に続く、…”

というコピーがついて、明らかに「セブン」(1995、監督:デヴィッド・フィンチャー、出演:ブラッド・ピット)を意識したと思われる場面も出てきますが、これを“挑戦”と捉えるなら、私はこちらに軍配を。

 ショッキングな映像だけに頼らず、“ドラマ”が丁寧に描かれた作品だと思いました。
出演者全員の存在感がジワリと感じられ、原案・製作にも関わったという主演のクリストファー・ランバートの入れ込みようが分かります。


絶妙のタイミング!

 聖書になぞらえた儀式的な連続殺人という題材からして目新しくなく、さほど期待はしていなかったし、クリストファー・ランバートが登場する冒頭では、あ〜ハズレかな〜、という思いがかすりましたが、その直後、脚本のうまさに引き込まれました。

 ランバート演じる刑事は、最初、実に嫌なヤツとして登場します。

 仲間からも毛嫌いされ、自己中心的でぶっきらぼう、家庭では妻にも冷たく、あまり人との会話を好まないコミュニケーションの苦手な男という風采で、それが見ていて退屈なのですが、同時に、
「どうしてこの人はこんなにかたくななんだろう?」
と、思ってしまうのです。
 その直後、(このタイミング!)、夜、彼がこっそり引き出しから一人の男の子の写真を撮りだし、その写真を強く胸に抱きしめて泣いているのかもしれない、というシーンが映し出されます。
 「その写真の男の子は彼の息子で、おそらく亡くなったのだろう。その心の空白が今の彼のかたくなさなんだ。」
ということがすぐ想像できました。
 このシーンの何とタイミングのいいことか!
「やられた〜!」
観客の心理を思い通りに操るように、時間を計ったような絶妙のタイミング。そして、殺人事件だけに終始しないもう一つのドラマの提示として十分な場面です。

 そして、その息子の死によって神へも心を閉ざしているという設定が、殺人事件を解く鍵としてとても重要な伏線となっているのです。
 開始約10数分で、これは面白い、と思いました。


ランバートの顔

 リンクしてあるページ↑で見て下さいね、彼の顔。
 甘いマスクとはほど遠い、刑事というよりも「犯人です〜」という凄みがありますよね。

 この顔がストーリーを面白くしてるんです。

 体の一部をそれぞれ切り取られた連続殺人のつながりを突きとめ、相棒の刑事にその謎解きをする場面があります。
 この時、ランバートは、まるで自慢話をするように話すのですが、謎を解いた自慢ではなく、犯人が如何に賢いかということ、そして、この殺人事件のもつ意味の重大性を誇っているかのように…。

 あの顔で、「捕まるかな?」という台詞が出てきた時、
「まさか彼が犯人じゃないよねー」
って、思いましたもの。

 聖書を引用し、“贖罪”の名の下にイエスを復活させようとする屈折した信仰心の犯人の心理と、息子を不慮の事故で亡くしてから信仰に対して懐疑的になっている彼の心理が重なり合う様子が見てとれる、印象的な場面でした。


存在感

 主役の刑事だけでなく、出演者すべてに存在感があり、最初はぶっきらぼうで嫌われ者だったランバートを中心に、だんだんとチームがまとまっていきます。
 アメリカは刑事物のTVシリーズが多いですが、その系統を連想させるような、ワンマン主人公に頼らない刑事ドラマという雰囲気がありました。

 刑事の奥さんまで、しっかり出番がありましたもの。
 犯人役の彼は、またお会いしたいですね。

 存在感があれば、当然感情移入しやすいです。
 監督は、そういう観客が感情移入するであろう登場人物へそれぞれ救いを与えることで、繰り返し殺人事件が起き、むごたらしい死体が発見されるという、犯人の狂気と異常性を描きながら、観る者を陰鬱にさせないという作品に仕上げています。


 ドラマで泣き、あまりの悲惨さ・残酷さに泣き、映画を観たー!という満足感十分の作品です。

 一方、怖がりの私にとって相当キツイ映像もありましたし、母の立場として見るに耐えない場面もありました。

 注:けして、け〜っして、妊婦さんはご覧にならないように!


余談ついでに謎解き

“それは6週間、6人の使徒、6人の死で完成する”(コピーより)

キリストの弟子は12人いるのになぜ?

 1.右腕、2.左腕、3.頭部、4.右脚、5.左脚、6.胴体。

 1〜3が切り取られた事件の後、刑事は謎解きをする。
 何のために切り取るのか、事件は毎週金曜日に起きている…、来週の金曜日も犠牲者が出るのか?…、なんと3週間後は“復活祭”=キリストの再生。

 この推理のテンポには私もうまくのせられました。ほとんど同時に、「Easter!」ってつぶやいてましたもの。

 犯人は6つのパーツが必要だったわけで、それを毎週一つずつ金曜日に集めようとしただけですね。
 その意図がバレた後は意味深なメッセージを残す必要もなくなったというわけです。




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