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映画雑文えんぴつ
トレーニング・デイ
TRAINING DAY
監督■アントワーン・フークア
脚本■デヴィッド・エアー
出演■デンゼル・ワシントン/イーサン・ホーク
2001 アメリカ 122分
http://trainingday.warnerbros.com/(オフィシャル・English)

http://www.warnerbros.co.jp/trainingday/(オフィシャル・Japanese)

デンゼル・ワシントンのやぶにらみの眼が観客を翻弄する! うぅ〜、鳥肌もんですぅぅ。

サスペンスというよりは、アメリカの暗部を描いた大まじめな社会派ドラマだと思う。デンゼルを登用してこういう映画を作るならスパイク・リーだろう!?と思っていたら、本作は黒人の監督だそうだ。<なるほど・・

デンゼルは麻薬捜査のプロフェッショナルなのか?それとも、ただの悪徳警官なのか?一貫して新人刑事の目を通してデンゼルの警官像が描かれ、ルーキーの動揺する心情に観客の視点が共鳴するという点で成功している。また、デンゼルの一人芝居になるような脚本ならこんなに魅力的な作品に仕上がらなかっただろう。

“デンゼル・ワシントン”という誰もが認める黒人俳優のカリスマにスラム街を徘徊させ、「俺が誰だか分かるか!」と慟哭させるなんて、デンゼルの“I am JUSTICE.”というイメージと、作品のテーマである“正義”がシンクロして身震いするほどだった。それほど、この場面は圧巻。おそらく、貧しさと偏見と差別にまみれた少年時代だったのだろう。下げたくもない頭を下げて、自分のプライドと主義をねじ曲げながら今の地位を獲得したに違いない。悪徳警官の半生がフラッシュバックするような迫力だ。

貧しい暮らしのマイノリティ達が、その境遇から抜け出そうとするなら、フットボールやバスケットボール・野球などのスポーツ選手を目指す道がある。その才能に恵まれなかったとしたら、デンゼル演じる刑事は、警官の持つ“権威”を手に入れたのだ。さしずめバッジの威力は黄門様の印籠か・・・。

その役をデンゼルが演るというところがすごい。彼は黒人社会の成功者だからね。

正義とは何だろう? 本来、正義に普遍性なんてあるのだろうか?
“正義のための戦争”を大義名分と掲げてはばからないアメリカで、この映画がヒットしている。作り手が皮肉屋なのか、観客は何を感じたのか・・・。

エンターテインメントに仕上げようと思えばそれもできただろうが、例え青くても、空々しくても、後味が悪かったとしても、この映画の結末に共感する。新人刑事が最後まで固執したのは、きっと“自尊心”だ。正義は、それを振りかざす者によって、その意味を様々に変えていく。正義など、ほんの隠れ蓑にすぎない。しかし、自尊心は自分で見出し、自らが守っていくものだと思う。正義の名の下に身を委ねることを求めるよりも、内なる自尊心を見失わないことが大切なのだと思えてきた。作品自体が、強い自尊心に支えられているような印象だった。

ちょっと余談。
冒頭のシーンでちょっとだけ登場するイーサン・ホークの妻役、シャーロット・アヤナの腰の位置の高いこと、高いこと!足が、なが〜〜い。そんでもって、すごい美人。ちょっと注目の女優さん発見です。

2001 Nov.


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