第11回おきでんシュガーホール新人演奏会


将来性において優れた音楽家を発掘し育成することを目的として開催された 佐敷町主催の新人演奏会も今回で11回目。
主催は佐敷町、沖縄電力、沖縄タイムス社/後援 沖縄県、沖縄県教育委員会、NHK沖縄放送局。
来年は市町村合併で市になるそうで、佐敷町として開催するのは今回で最後とのこと。

新人演奏会のことを書く前に、まずは演奏会までの流れをざっと紹介します。
まず前年の10月に募集要項を配布。翌年1月に募集を締め切り、書類選考・音源審査を 行い、3月のオーディション出演者を決定。3月にオーディションを開催し (オーディションは入場無料で聴けます)、そこから 部門にかかわらず10名以内の新人演奏会出演者を決定。 出演予定者は入選、優秀賞、グランプリとして5月(または4月)の新人演奏会で 演奏。
今回、応募締め切りは1月20日。オーディション出演決定者は2月10日までに本人宛通知。 3月27日にオーディションを開催し、5月22日に本番、新人演奏会となります。
応募部門は、声楽部門、ピアノ・弦楽器部門、管楽器・打楽器部門の3部門に分かれています。 それぞれ応募資格年齢は違いますが、若き音楽家ということなので、30歳未満までが応募資格者のようです。 国籍は問わないというように、今回は台湾、中国、スイスからも応募があったそうです。 今回、応募が50名近く(だったはず)、書類選考・音源審査の段階で合格者が29名。新人演奏会への 出演が決まったのは10名の演奏家の方々でした。(うち1名の方が都合により出演を辞退されました。 ヴァイオリン、聴きたかったのですが……)
私の中・高の先輩が実は過去の新人演奏会の出身者です。 彼女は歌手としてアジアにその活動の場を広げています。彼女だけでなく、 このシュガーホールの新人演奏会の出演者はみなそれぞれ国内外で活躍されていらっしゃいます。
このおきでんシュガーホール新人演奏会というのはそんな演奏会なのです。

今回、出演演奏者は9名。マリンバ2名、声楽(ソプラノ)2名、ホルン、トランペット、チェロ、 フルート、ピアノがそれぞれ1名ずつでした。

私は今回はじめてシュガーホールに行って来ました。
ドキドキしながら、友人と二人、開演を今か今かと待っていました。 会場はほぼ満席。立ち見もちらほらといて、お客さんは老若男女、幅広い年齢層でした。
トップバッターは入選の方のマリンバ演奏。(マリンバは木琴系楽器) なんだか宮崎駿監督の世界と言う感じで、弱い音の際には泡がぽこぽこ生まれるような、 なんだか海の中にいるような、そんな感じの音楽でした。前半は緩やかに、後半は激しく、 時には弱く、時には強く、遅く、早く……。早い時は打っているバチが目で終えないほどの早さでした。 素晴らしいテクニック。バチを片手で3つ持って演奏したり……。全部で10本ほど用意していたようなのですが、 時折、章節ごとにバチを持ち替えたりしていて、同じに見えていても微妙に音の出方が違うんだろうなぁと 聴きながら思っていました。伴奏のピアノとの息も良くて、すごくなんていうんだろう、ファンタジーな 印象を受けました。
2番目は入選者のソプラノだったのですが、こちらは緊張していたのか、表情も声もこわばっているように感じました。 高い声が上手く出てないように思えたり、声量も弱かったように感じました。
3番目は入選トランペット。こちらは2曲演奏されたのですが、1曲目がチベットの山のような、 重厚な、というか荘厳な、というか、自然のすごさのようなイメージを受けました。2曲目は都会の夕暮れの 印象を受けました。一緒に行った友人も2曲目は夕日を思い描いたのだそう。 ふたつのトランペットを使い分けた演奏、音がすごく心地よかったです。
4番目は入選者のマリンバソロ。この方は上海からいらしたそうです。 手首が強いんだなぁという印象が強かったです。 手の動きを中心にみていて、そこに吸い込まれていたので、曲はあまり聴いていませんでした。(汗) 友人が言うには低い音が風の音のような、自然界の音に聴こえたそう。
5番手はホルン。ホルンの生演奏は初めてで、もっと低い音を想像していたのですが、 思ったより高く明るい音でした。曲の印象としては「希望」柔らかな希望、 鮮やかな希望、凛とした希望。いろんな希望が詰まっているなぁという感想を覚えました。
6番目の演奏者は優秀賞のソプラノ。3曲を歌われたのですが、顔の表情も豊かで、 これぞオペラ! という感じの素晴らしく通った、マイクなんていらない声量で、表現も多彩な 素晴らしい独唱でした。役に入り込んでいて、すごく聴いていて気持ちよかったです。満足しました。 横隔膜をすごく使っているみたいで、おなかに注目していたのですが、腹筋がよく動いていました。 イタリアに留学していただけあるなぁ、プロだなぁと感動。久しぶりに声楽を聴いた気がしました。
7番目は入選のフルート奏者の方の演奏でした。フルートってこんな音が出るの??というくらい、 尺八でした。脳内で剣戟の音がしたくらい楽曲が日本的。彼女の後ろに竹林と風がみえました。 演奏後の感想を友人に洩らしたら、どれひとつとってもフルート的な音は出ていなかったらしいです。 尺八に似せた音は演出なのか、と感動しましたが、これが初のフルートだった私としては フルート本来の音もぜひとも聴きたかったです。
8番目は優秀賞のチェロ奏者の方の演奏でした。チェロの生演奏は初めてだった私。 もうそれだけでうっとりでした。以前「ハルモニア」というドラマを観て以来、チェロにも 憧れを抱いていた私。その憧れの楽器が目の前で演奏されていて、ものすごく嬉しかったです。 優雅な手首の流れ、弦を弾く音。思ったより高い音に心弾むようでした。
最後、トリを飾るのはグランプリのピアノ奏者。 手首の柔らかさ、しなやかさ、しっかりした指。どんなに早くても崩れない、みだれない音、 動き。強弱、速度。圧倒的な存在感。すごいなぁとただただ感嘆。もうかたくなった自分の指をみて、 少しずつでも続けなくっちゃなと反省。
友人とふたりで、すごいねぇと感動していました。

3時間弱に及ぶ演奏会(間に2度休憩あり)のあとはそれぞれの奏者への表彰へうつりました。
グランプリへは奨学金100万円。優秀賞へは奨励金25万円。入選には10万円が授与されました。
(回によっては審査員の推薦により共演者賞が授与される場合もあるようです。今回はありませんでした)
グランプリ奏者にはシュガーホールでのリサイタル開催権も与えられるらしいです。 グランプリの方のリサイタルがあったらまたシュガーホールに聴きに来ようと思いました。

今回、初めて新人演奏会を聴きました。演奏会を聴く前は正直、チケット2000円(当日券は2500円) は高いのではないか、と思っていたのですが、演奏会後は、チケット代はけして高くないと思いました。 よく考えれば、これから国内外、アジアで活躍する(すでに活躍されている方もいらっしゃいますが) 演奏家の方々の演奏なのです。安いくらいだと思います。

これからの演奏家の方々のご活躍に期待大です。特にソプラノ歌手の森川さん!! 貴女のオペラが聴きたいです!! ご活躍を期待しています!!

町でこんな素晴らしい演奏会場を持ち、なおかつ10年以上もこのような演奏会を続けている 佐敷町さん、これからもずっとこの素晴らしい演奏会を続けてください。お願いします。

この第11回おきでんシュガーホール新人演奏会の模様は、6月25日(土)10時〜10時55分、沖縄テレビ で放映されます。



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