火と鐘の祭り



2004.12.31〜2005.1.1
沖縄戦最後の地である糸満市摩文仁。その地にある平和記念公園敷地内にある平和祈念堂で厳かに行われる祭りです。
今回で27回目。前日の大雨からぐんと気温が下がり、当日、今にも雨が降るのではないか、 という厚い雲の下、祭りは静かに始まっていました。
「平和の象徴である"まつり"を通して戦争の悲惨さ平和の尊さを訴え, あの大戦を体験したお年寄りから戦争を知らない若い世代が一体となり, 戦争の犠牲となられた人びとに思いをいたし, 一人一人平和への決意を込めて年を送り新年を迎える行事」というのがこの祭りの開催趣旨です。
式典自体が始まるのは22時頃からですが、19時45分から子どもたちの空手の演舞や乙女椿の琉球舞踊が 披露されています。 式典までの間は琉球舞踊だけではなく、餅つき大会のようなものもあったように思います。 (何せ十数年前の記憶ですので、あいまいで……すみません)
今回、私たちは松明が目的だったため、最初から参加していませんでした。摩文仁に到着したのは22時で、 すでに平和祈念堂では式典が始まっていました。
入館料500円を払い(この時の入場券がメインイベントの松明を受け取るチケット代わりになります) 平和祈念像があるその部屋では老若男女、沖縄の人、本土の人、海外からの方々、いろいろな人がいました。
私たちは部屋の入り口に立っていたのですが、関係者の方に道の真ん中を開ける様に言われ、退くと、 カンテラを持った2人の若者が立っていました。
そのカンテラには長崎、広島からの平和の炎を移し、持ってきたという炎が点っていました。 カンテラは参加者を代表して沖国大、琉大に留学中のふたりの若者の手で、祈念像の正面まで運ばれ、 そこで5つのろうそく(手作りだそうで、ひとつひとつがかなり大きかったです)に静かに火を移しました。
誰も声をあげず、静かに時が流れていき、黙祷の合図に1分間、私も目を閉じました。 その後、ボーイスカウト、ガールスカウトの子どもたちが平和の誓いをおこない、室内に歌声が響き渡り、 そして、式典の終わりに5つの手作り のろうそくがこどもたちの手によって祈念堂の外へと運ばれていきました。

式典後、松明まではしばらく時間があったので、祈念堂内の展示物を見学、入り口の千羽鶴を折り、 23時10分、松明を配るとのことで、外へと出ると、すでにけっこうな人数の方々が松明をもらい、 階段で並んでいました。
私たちも入場券をみせ、松明をもらい、列に加わりました。列は階段の端と端、二手に分かれていまして、 その傍でボーイスカウト、ガールスカウトの子たちが、 松明の持ち方の注意とか、列の整理を一生懸命されてました。
寒空の下、待つこと数十分。手がかじかみ、 松明を持つのも辛くなりかけた頃、祈念堂の塔(45mあるそうです)のてっぺんに 明かりが灯りました。(さきほどのカンテラの火です) その祈りの火がゆっくりゆっくりと私たちの頭上を通り、階段下へと下りていきます。
聖火台のようなものに火が移され、合わせるように列が動き、 持っている松明へとひとりひとりが炎を点し、階段を上って平和祈念堂横の広場へと進みました。
階段を上り、誘導通りに松明をもって、広場をぐるぐると円をかくように前の人を追いかけていると、 この姿を客観的に見たら、やっぱり怪しげな宗教っぽいよなぁと考えてしまい、ちょっと笑ってしまいました。 一緒に行ったメンバーが私の話を聞いただけで「黒ミサ」と言った気持ちがちょっと分かったような気がします。 (ヴィーナスなんて松明を持ちながら「部外者にはみせない村秘儀の祭り」とか言ってました。でも 雰囲気を表すとしたらそんな感じにならなくもないです)
中央の大きな聖火台を中心に、4重くらいの輪を作り、みな各々の松明を掲げ、静かにただその時を待ちます。
平和祈念像賛歌の歌が流れ、みんなでカウントダウンをし、0時になると中央の聖火台に火が灯され、 煌々と眩しいくらいの炎が現れました。
日付が変わった瞬間、みんなで「明けましておめでとう」を言い合って、「1月1日」を歌いました。

私は外から2番目の輪の列にいたので、参加者の人たちを見ることができたのですが、みな、穏やかな 顔をされていました。人種、性別、背景それぞれ違うこれだけの人たちが、 一緒に平和を祈ることができるのに……。戦争のない平和な世界になるのはいつのことなのでしょう。 みな、願っていることは同じなのに。

楽団の生演奏を聴きながら、その後は松明の炎を消し、係りの人に火の消えたそれを渡し、 鐘をついて帰りました。
去年は松明が終わったあとしばらくは祈念堂内で乙女椿の公演があったそうなのですが、今年はこれで おしまい、ということで、終わったあとにやってきたお客さんたちは悔しそうに帰っていかれました。 (私が以前参加した時は2時近くまで催し物をやっていた気がするのですが、気のせいだったのかな。 以前は人数も今回より多かったような気がします)
大晦日から元旦にかけて行われるこの祭り。実は県民にはあまり知られていません。 知る人しか知らないお祭りです。(でも留学で沖縄に来られた方々は知っているようで、 参加者の中には留学生の方々がかなりいます)私もガールスカウトで過去参加しなかったら きっとこの祭りのことは知らないままだったと思います。
真夜中の祭りで、また摩文仁ということで躊躇される方もいらっしゃるかと思いますが、 一度参加されてみてください。新しい年を迎える瞬間、平和を祈る、 火を見つめ、厳かに迎える新年も良いと思いませんか?


参考サイト (財)沖縄協会 (平和記念行事に掲載)
真南風ネット(イベントに掲載)

戻る