映画雑文 | ||
恋愛小説家 AS GOOD AS IT GETS |
監督■ジェームズ・L・ブルックス 脚本■マーク・アンドラス/ジェームズ・L・ブルックス 出演■ジャック・ニコルソン/ヘレン・ハント/グレッグ・キニア 1997 アメリカ 138分 ジャック・ニコルソン自身はそれほど嫌いな俳優ではないのですが、なぜか彼が出演する作品は私にとってつまらないものが多いんです。 「ワイルドシングス」(1998)で俳優のイメージについてふれましたが、ニコルソンはそのイメージの“持ち腐れ”のような気がします。 見るからに凄味のあるお顔ですからね。そういう役なら当然ハマります。悪役だって、汚れ役だって当然ハ○(まる)。 が、“当然”という役ばかりではちっとも面白みがないのです、私にとって。 そのニコルソン出演作でウケたのが「マーズ・アタック!」(1996)。 独特のバートン・ワールドに乗せられた三の線のニコルソンが笑えます。 丁度、日本の「悪役商会」の面々が極悪人の仮面を脱いでニコッと笑ったそのギャップの面白さ。とでも言うような…。 自らのイメージをかなぐり捨てるのでなく(捨ててはいけない)、それをもてあそんでくれた方がその俳優に惹かれます。 本作で彼は三の線に加えて、“どーにも嫌なヤツ”を演じています。 ニコルソンの顔で、あんな性格の悪い男が近くにいたらぜーったい嫌だ。そう思ったのは私だけではないはず。 そういう役を演じているニコルソンから生身の人間の鼓動が聞こえます。 どうにも嫌なヤツなんだけど、かえってそれを“人間味あふれる”と感じさせてしまうところがニコルソンは巧かったし、この作品の魅力にもなっているのだと思いました。 主人公の男が改心したり、恋愛の勝利者にならないエンディングもよかった。 だってそうでしょ?あんなに嫌なヤツなんだもの。 さて、もう一人の主役ヘレン・ハントの評判が良いようです。 私は「ツイスター」(1996)を観ていないし…、「君といた夏」(1988)や「ペギー・スーの結婚」(1986)(出演作が思い浮かばなくて急きょ検索)での彼女の記憶があまりなくて、どちらかというと目立った美人でもなくメリル・ストリープ系のヌボ〜とした顔だし、こんなに印象が薄い女優さんだったかな?と思いました。 ところが、本作の彼女はなかなか気に入っています。 なぜだろう? と考えてたどり着いた結論は、彼女は“正しい子持ちのオバサン”だったということ。 ハント演じるウェイトレスは病気の子供をもつ母親。同じ“子持ちのオバサン”の立場として、男にチヤホヤされて多少は心弾んでもそんなに簡単になびくもんじゃない!と思うのね。 それが現実的ってもんでしょう。 そう!そんなに簡単にベッドインされちゃ困るー! 映画の中での男女のロマンスというと、出会いはいつも突然で、あっという間に恋い焦がれて、あれよあれよという間にラブシーン!という相も変わらない展開が多いし、ハッピーエンドだろうがバッドエンドだろうが、それでも若い頃はスクリーンの中に自分を投影して楽しめましたが、さすがに今はメロドラマものはちょっと引いてしまいます。 それが中年のオジサンとオバサンが主人公になると、とたんに興ざめてしまうのです。 一目惚れや運命の人を信じないわけではないけれど、だからといって短絡的にロマンスに走るなんてことのないオバサンがいるってこともちゃんと取り上げてほしいのよね。私としては。 映画の中の二人が結ばれるかどうかはご想像におまかせ、というラストは粋だと思いました。晴れて二人は手を取り合って…、というラストシーンだったらこんなに印象は残らなかったかもしれません。 その後のストーリー。 私だったらねぇ、ニコルソンはやっぱり自己チューが直らずレストランのいつもの席じゃないと食事ができなくて、ハントとはつかず離れずの関係のまま彼女の手のひらの上で遊んでいる。いや、遊ばされてジタバタしている…。 もしかして自分の経験をネタに書いた小説がベストセラーになったりして〜。 あーん、私ってどうしてこんなにあまのじゃくー!? |