こうした状況の下で、琉大の処分問題は正念場をむかえていた。
民政府からは結論をせかされていた理事会は、15日、16日とひき続いて会議を開いていた。
17日午前、理事会は民政官との会見が予定され、その後再び理事会、そして評議員会も開かれることになっていて、動きはあわただしくなってきた。
学生会の役員、特別委員は、対策の手がかりがつかめないまま学内に待機していた。
民政府から戻り再開していた理事会は、午後四時すぎ、結論として除籍6名、謹慎1名の処分を発表した。民政府の強硬姿勢の前についに屈服したということである。
理事会と学長の連名で発表された声明及び理事長、学長の談話を次に揚げておく。
学生処分問題に関する琉大理事会及び学長声明
一 声明=琉球大学理事会及び学長は琉球教育法第14章に規定されたその責任を認識して、ここに琉球大学が共産主義に反対であり、且つ米国が共産主義を防圧し、東洋において共産主義の侵略から自由諸国を守る指導的立場にあることを再確認するものであります。この度、本学学生の行ったデモ行進中一部学生が、反米的行動をなしたことについて、当地滞在の米人ならびに全米人に対し、深く陳謝し、併せてこの反米的行動の結果、中部地区住民に対し不安と苦痛を与えたことに対し深く責任を感ずるものであります。
琉球大学の創立及び維持に米国政府及び米国市民が多大の援助をしたにも拘らず、一部の学生がかかる行為をなしたことは、誠に遺憾であり、その責任者と反米的言辞をろうした学生に対し別項のような処分をするとともに、今後かかる行為が再び起らないようにすることを内外に声明します。なお今後、本学学生は許可なくして学内及び学外の活動に参加することを禁ずる。
二 処分=(氏名及び行為は略)
右の行為は学生の本分にもとり、本学の存立を危くし、いわゆる四原則運動を逸脱して中部地区住民に大きな苦痛と不安を与え本学の信用を失墜した。よって次の如く処分する。
6名(氏名とくに発表せず)
学則第11章第35条により除籍する。
一名(氏名とくに発表せず)
学則第11章第35条により謹慎を命ず。
(8月17日)
なお職員、学生を問わず琉球教育法第14章の規定する趣旨に反するものは処分する。
前上門理事長談(要旨) 今回の事件の発端は、7月28日のデモ行進中における一部学生の言動が直接の原因となったのであります。琉球大学の創立の精神からして、容共・反米の温床と誤解せられる行為は厳にいましめなければなりません。その立場から今回のデモ行進において一部学生の行きすぎた行為は、大学の信用を失墜したものと考えるのであります。
学生の処分は当初は謹慎処分であったのですが、民政府は、琉球大学は共産主義者や反米主義者や学校の秩序を破壊する者の温床たらしめるために建てたものではない。若しこのような状態ならば学校の存続も難しいといわれました。要するに民政府は、根本的改革をせよと要求されたのであります。学校存廃の重大な事態に立ち至ったのであります。若し万一廃校となれば、多くの子弟の大学進学への道もふさがれる結果になり、この点深く憂慮するものであります。そのため我々の処分も発表のような厳罰となったのであります。
安里学長談(要旨) この事件により琉球大学は存廃の重大岐路に立たされ、大学を存続し将来の発展を図るためにこの事件に責任ある学生及び反米的言辞を弄した学生を処分致しました。学生指導の責任を十分果し得ず、父兄の皆様に対し誠に申訳なく存じています。
学生諸君は、母校の存続発展のため深く反省し、あくまで冷静にいささかも反米的軽挙な行動のないよう警告します。学内の秩序を乱し、本学の存続を危うくするが如き行動の絶対にないよう、学生諸君は固く学則を遵守するよう厳達します。
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