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私記:父の記録

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 伊江島からの請願書

 去る18日琉球大学理事会が学生の一部に、土地を守る運動の際に反米的な言動があったということで厳罰に処したことは、誠に遺憾に堪えません。私達が昨年3月土地を取上げられ、米軍の武力によって家は焼かれ、多くの病人を出し、喰う物がなく学生は学校を休み、琉球政府に善処方を嘆願すれば警察の実力で追出され、島に帰って畑に食糧を求めれば米軍によって逮捕・暴行・投獄の憂目にあわされ、遂に生きる道を失い乞食にまで陥ったとき、真先に立ち上って私達を慰問し救援して下さったのが貴大学の学生さん達でありました。私達はこの学生さん方の真心と同胞愛の尊い人間最高の善行に対し、衷心より感謝申し上げ終生忘れることの出来ないのみでなく、子々孫々にまで言い伝えられる事でありましょう。斯る立派な学生さん方の一部が義憤の余り、ヤンキーゴーホームと言ったからといって、除籍6名、謹慎1名の厳罰処分を言い渡された事はあまりにも無道な仕打だと悲憤に堪えません。私達農民の正直な気持を申し上げますならば、ヤンキーゴーホーム処の話ではありません。斯る非人間的土地取上げをしている米軍は追払いたいというのが本心です。ところが戦争に負けたし、聖人の道からすると他人の悪を想うことすら人間の道に反するとすれば、学生さんの一部がヤンキーゴーホームと米人の悪口を言ったことに対しては率直に悪かったと認めねばなりません。だがしかし、そう言わざるを得なくした米人側の過去における余りにも惨酷すぎた土地取上げについては、米人側も反省して貰いたいのであります。そして米人が常に公表している同情と理解と寛大な精神を以って、今度の厳罰の処置を速やかに取り消してくださるよう、真謝区民一同は茲に懇願いたすものであります。

 もしも私達の懇願の真心が理解されず厳罰の処置が取り消されない場合は、いよいよ反米者が激増する事と憂うるものであり、世界の歴史はこの汚名を刻み、なお地上に行われる凡ての善意を知り給う神は、これをさばき給うでありましょう。

右懇願致します。
(8月22日)



 伊佐浜部落の要望書

 四原則貫徹運動に参加した琉大学生に対し反米的行動として7名の学生に苛酷な処置をしたことは甚だ当を得ず、これは明らかに住民、とくに次代を背負う重大な責務ある青年学生に対する無気力化と権力追従の弊を奨めるものである。

 正義の真理のため先頭に立つものが社会から葬られることは俗悪迎合主義者の抬頭を促すものである。よってこれら処分学生が将来決して社会の敗北者にならないよう土地協は全住民の協力を得てあらゆる努力と方策を計画立案されるよう要望する。
   
(8月29日)



  コザ地区PTA連合会声明

 琉球大学理事会が大学の威信をきづつけその存廃にかかわるという理由で、当初の信念をまげて学生の純真な四原則貫徹の民族運動をただちに反米的と認定し、6名の除籍と1名の謹慎処分をとったことは遺憾である。民族興亡の重大問題に立って真理と正義を愛し、もえる愛郷心をもって全県民と共に行動することは、自然のなり行きであり、一面沖縄の将来のために、たのもしささえ感じた。しかも大学当局や関係当局の許可を得て行動したデモ行進であり、言動の一辺をとらえて、非教育的、非道義的措置がとられたことはあまりにも残酷であり、父兄の立場から妥当とは考えられない。琉球大学が真に学問の自由と自治を堅持し、県民のための大学としての堅実な発展を希求し、更にわきおこりつつある世論に虚心に耳を傾けるなら、今回の措置を撤回することが賢明な策である。ここに本地区PTA連合会の名で撤回を要請する。
(8月29日)
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