民間企業のコンサルをして感じるのは、経営者、幹部に、人の能力を見抜き、人を育てる能力がない人が案外多い。
琴線を読めない経営者、幹部に人材育成はできません。
指導する側の問題点として左記のような点が挙げられます。
・指導者の心理分析力不足
・教える技術力不足
・意思疎通のかい離
・教えるシステムの不備
・人材育成ビジョンの不備
売れる法則で心理メカニズムを理解し、人をコントロールして結果を生む結果を生むには、洞察力、感性力、仮説力、実践力が必要です。売れる法則と同様に、人材が育つ結果を生むには洞察力、感性力、仮説力、実践力が経営者、幹部に必要なのです。
教える側が心理分析のスキルと身につければ、意思疎通のかい離という愚行をしなくてすみます。マーケティングで使う顧客心理分析のスキルを社内スタッフ人材育成に応用すれば、より効果的な人材育成に繋がります。
長年、心理分析をしていたので、私は人に会うとその人の人間性、仕事の能力がイメージとして湧いて見えてきます。それをコンサルをしている会社スタッフの個人面談にも活かします。
面談して感じるのは、本人が能力を発揮できない状況に気がついていない点です。指導する側は考課表などを使いその人の職責をまっとうしているか評価します。しかしその前に、本人の潜在的能力を引き出すことができていません。
ある接客業の会社で、スタッフのRさんを面談しました。Rさんの自信なさげな表情が印象的でした。Rさんへの社長の評価は低く、「辞めないで、会社について来るだけが取柄」と言うくらいでした。
私の評価は逆で、Rさんの接客に関しての潜在能力は高く、リーダーとしてもやっていけると感じていました。接客業では、人間力が重要な要素になります。Rさんは真面目で人間力の潜在能力は高かったのです。ただ、その潜在的な人間力を高める方法が本人も指導する側もわからず、ほったらかしにしている状態でした。
本人はギャップを何かしら感じ職場で働いています。ということは、極端に言えばその人は、職場が自分の働きやすい場所として感じていない。
そこで、本人の潜在的なストレスとなっている部分を指摘し、人間力を伸ばし職場で能力を発揮するために、改善に必要なワンポイントをアドバイスするのです。
接客には挨拶から始まり、サービスの提供、見送りまで流れがあり、Rさんは接客の形式だけにとらわれていると感じました。接客は形ではなくお客様の琴線に触れるサービスの提供ですが、その本質がRさんには理解できていませんでした。
Rさんに「あなたは真面目だし潜在的能力は高い。それを発揮できていないだけです。お客様が今どう感じているのかに集中して感じ取るようにしてください」とお客様への向き合い方をアドバイスしました。
アドバイスのポイントは、「お客様がどう感じているか集中し感じ取る」といたってシンプルですが、Rさんは「それなら自分もできる」と感じたのでしょう。腑に落ちたようで、真摯にお客様へ真正面から向き合い始めました。
お客様がどう感じているのか集中し続けることで、Rさんの感性が高まり、接客もどんどんレベルアップしていきました。本来もっている人間力が表出し始め、半年前より見違えるように、自ら考え追求できる姿勢ができ、サービスの技術レベルも高まり周りの人も一目を置くくらいになりました。自分に自信なさそうにしていたRさんですが、仕事への自信で、表情にも輝きが増してきました。
数ヵ月が経過し、社長から「Rさんを店舗のリーダーにしたい」と言うほどRさんへの評価が一変しました。数ヵ月前の社長の評価は「辞めないで、会社について来るだけが取柄」でした。
Rさんはなんと店長に抜擢されたのです。
指導する側がアドバイスする時に失敗するのは、色々言いすぎることです。色々とアドバイスしてしまうのは、指導される人の心理状態を理解していないからです。
逆に、指導される人の心理状態を見抜き、ポイントを絞込んでその人が能力を発揮するようなアドバイスすることで、確実にスキル、人間力が伸びていきます。仕事が楽しくなり、自らの意志で仕事を進めることができるようになります。